思い出はきれいなままで
6つ年下のあの子は
その頃二十歳になったばかりで
とても綺麗な長い髪をしていた
須磨海岸のベンチに腰掛けて
秋の終りの海風に
乱れる髪の毛を気にしていた
会話なんかほとんどなくて
ときおり視線を合わせては
微笑みあうだけの初心な二人だったね
波の輝きはキラキラあの子の瞳に映っていたし
あの子の肌は透き通るようにきれいだった
海風に君の髪が揺れていて
二人の前に広がる須磨の海は
希望に満ちた海だった
僕の記憶の中には
あの情景が
今でも鮮明に焼き付けられていて
それはとても大事な思い出になっている
実らない恋だったから
思い出は美しいままなのかも知れないけれど・・・
あの子の住んでたこの街に
20年以上も経って帰って来た僕は
こうして時おりあの子を思い出し
逢ってみたい気も少しはするのだけれど・・・
きっともう逢わないほうが
お互いのためには良いのだろうね
だって・・・
思い出はきれいなままがいいものね
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