初 夏
緑の風の中
車のハンドルに指を掛け
さわやかなジャズポップス
君を乗せて
あてもなく
流れるリズムのままに車を走らせる
白樺の高原、早瀬の飛まつ
青空に浮かぶ、ぽっかりの白い雲
「どこまで行くんだい？」
問いかけてみても君はただ笑うだけ
つられて僕も微笑んだ
この春
僕の時間は今確かにきらめいている
見渡す高原に車をとめた
君はポプラの木陰で
首をかしげて僕を見つめる
吹き抜ける風に髪を気にする
木漏れ日に映る肌の白さがやけに眩しくて
思わず目をそらした
晴れわたる五月の空の下
少し歩いて君に振り向くと包み込むような八甲田の緑
残雪の輝きとピンクのブラウスの
コントラストに息がつまる
話す言葉が何も見つからないままに
また立ちどまり
少しためらったけど
心はもう君に歩き始めている
（昭和５５年５月３１日）
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